信号処理研究室 斎藤 博人 准教授

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世代と空間を超えたコミュニケーションツールを開発
信号処理研究室
斎藤 博人 准教授
デジタル情報工学コース
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話した内容をゆっくりとした発話に切り替える話速変換技術

音声処理技術を基盤として、人間同士のコミュニケーションを支援する技術の研究開発に取り組んでいます。人間の話した声を即座にゆっくりした速度に変換して、聞かせる「話速変換技術」を遠隔会話で行う研究をしています。この研究は、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)の研究課題*1に採択され、現在、話し手と聞き手の時間差を、視覚と聴覚で把握できるようにし、ユーザの意図や気持ちが共有できるインタフェースの開発を進めています。

*1 科研費 基盤研究(C)研究課題名「時間管理モデルと感情印象の修正による話者の意図が伝わる話速変換会話システムの実現」 研究代表者 斎藤博人、 研究分担者 武川直樹

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話速変換

意図を正確に伝える会話環境をデザイン

実際に行っている会話実験でのインタフェースには、話し手には、相手の発話だけでなく、相手が聞いている自分の発話、つまり話している人は自分のゆっくりとなった音声を聞かせるというアイディアを入れています。そうすると相手は、遅れて伝わる自分の発話のどこを聞いているかを把握できるようになるので、順番交替の際に生ずる、発話衝突や不自然な間を軽減できます。この技術が完成すると、聞き取りに不安のある人でも、早口な人達との会話を楽しめるようになります。

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基礎技術のプロトタイプで平成27年度HC賞を受賞

このような基礎技術を開発できた背景には、話速変換、音声区間の自動抽出、それらをリアルタイムに計算する信号処理技術はもちろん、会話分析、人間の行動分析について実験を通じて追求していったからです。これは、トータルの幅広い知識の結晶といってもいいでしょう。その結果、電子情報通信学会HCG(ヒューマンコミュニケーショングループ)シンポジウムにおいて平成27年度ヒューマンコミュニケーション賞を受賞しました。

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先生へのQ&A

この研究をしようと思ったきっかけは何ですか?
もともとは、信号処理という分野でディジタルフィルタの設計法、音声の分析と加工技術の研究をしていました。大学院生の時にある企業から、音声をゆっくり聞きたいという要望があって、それが話速変換技術を研究するきっかけになりました。個人的にも、目の前にいるネイティブスピーカの英語を、即座にゆっくり聞き取りたいと思っていました。その要素技術を人間が介在する現実のシステムに役立てたいと考えました。
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研究の魅力を教えてください。
音声は入力も出力も人間です。人間の音声を入力して、それを加工して人間のために出力する。だから人間を知らなくては、この技術は完成しないのです。数学と工学的な知識や技術だけではなく、それを使って人間がどう変わるのか、自分たちのアイディアによって話しやすさが向上して話が盛り上がったりする。そして親密度が高く話せる、身近な存在になるようなインタフェースの開発も魅力の1つです。
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今後の夢や展望を教えてください。
話速変換技術の成果は、マルチメディアコミュニケーションや擬人化エージェント、介護ロボット等、音声合成装置にも応用でき音声変換が介在する、あらゆる分野で利用が期待できます。音声から雰囲気、感情を認識する技術、ロボットと会話する中で、高齢者にわかりやすく話しかけるタイミングや音調に対する音声処理からロボットと人間がより人間らしくコミュニケーションできる技術にも取り組んでいきたいと考えています。
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研究室をのぞいてみよう!

理系の知識+人間研究の日々

私もそうですが、理系の学生の方は、信号処理や数学、プログラムなどが大好きなのですが、人間とはなんぞやといった定性的な部分も、この話速変換技術では重要になってきます。研究室のメンバーも、学会発表もして、成果も出てきてきたことで、音声処理という昔からある技術にプラスしたインタフェース開発に役立つ、人間研究についても本格的に取り組むようになってきました。
アイディアやコンセプトを具現化する基盤技術を身につけよう

自分の実現したいモノやシステムを設計するには、アイディアやコンセプトも大切ですが、それを具現化するためには、基盤技術である数学や工学、プログラミングなどの能力が必要になってきます。どんな分野でも基礎をきちんと学んでおくと、それをきっかけに拡げていくことができます。私の場合はコンピュータと信号処理でしたが、それは人によって違うと思います。まずはしっかりと今の勉強を頑張って、大学受験を突破してください。

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