環境行動研究室 伊藤 俊介 教授

情報環境学部の先生の研究内容や知られざる素顔をご紹介する情環の先生。興味のあるコースやテーマやキーワードで「情環の先生」と出会おう!
人の視点でみた、
よいデザインを探求
環境行動研究室
伊藤 俊介 教授
建築デザインコース
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人にやさしい建物・街を考える

環境行動研究室では、人(子ども、住民、ユーザ)の視点から環境を評価し、よいデザインのあり方を考える研究をしています。それは、人の行動や心理、社会・文化の仕組みと空間やモノの相互の関わりについて調査・分析する事で、建築や街のデザインを追求することです。環境心理学という学際的な分野での研究の成果は、建築・都市の計画やプロダクトデザインのような物理的な世界だけでなく、インターネット店舗のようなバーチャル空間のデザインにも活用できます。

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居酒屋やカフェの空間が示す社会のトレンド

これまで学生が行った研究の中には、居酒屋やカフェのインテリアの変化を時代毎に追ったものがあります。過去の資料を調べ、フィールドワークを行った結果、70年代の居酒屋のインテリアは、洋風のファミレス調でしたが、近年は民家風など和風になってきました。また照明器具も、上から蛍光灯で照らしていたのが、ペンダントや卓上ランプに変わり、照明器具がだんだん下がることで、こじんまりとした空間が作られるようになりました。カフェも同様に、応接室のような空間から、一人でもゆっくり過ごせる空間へと変わっています。商業空間に表れるトレンドがはっきりと見える研究でした。

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空間のデザインが子どもの社会的遊びを育む

この他にも、保育園・幼稚園に毎週訪問し、子供の遊びについて調査・研究した学生もいました。一般に、子供は小集団で狭い所で遊ぶのが好きという定説がありますが、その学生の調査からは面白い現象が分かりました。子供たちは大人数になると集団が分かれます。しかし、時としてそれぞれ別の遊びをしているようで、実は、みんなが大きなストーリーの一部を演じている遊び方をすることがわかったのです。お医者さんごっこをしていた子供達の人数が増えてくると、集団が分割されてお医者さんごっこと受付ごっこ、救急車ごっこと事故現場ごっこなどが出てくる。結果的に、それぞれが小集団で遊んでいても、全体では病院ごっこという物語を共有しているような例がありました。区切られた場所で少人数で遊びながら、まわりとつながっていることで社会的な遊びが発生することが、この研究から明らかになりました。これは、子どものための環境をデザインする大きなヒントです。

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先生へのQ&A

この研究をしようと思ったきっかけは何ですか?
私自身は、大学に行く時には建築と決めていたのですが、大学受験をする時に理系か文系かで直前まで迷っていたのです。ですから、建築でも人の心理や行動を 研究する環境心理学という学際的な分野を学びました。情報環境学部では建築だけではなく、情報工学を専門とする学生たちが多くいます。彼らの中のデザイン や人間に関心のある学生が、私が考えていなかった面白いテーマを発案することもよくあります。建築学・環境心理学でユーザの行動・心理を調べるノウハウを 応用して、積極的に建築以外の対象の研究も行っています。
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研究の魅力を教えてください。
環境行動研究室では、大きな論文の一部を学生に分担してもらうという研究スタイルはとっていません。研究テーマは、学生各々と相談しながら決めています。 それは、私が指導できるノウハウを応用できるかどうかという判断に基づいています。学生同士も全然違うテーマ、トピックを研究しているので、お互いが刺激 しあう環境になっています。たまたま関心の方向性が似ているという時にはチームを組んでやります。様々なテーマの「種」をまいてみて、本格的な研究に育ち そうかを見ている感じです。うまくいったものは、その後の学生が発展させますし、卒論・修論単体で完結しても良い芽を育てる学生は多いです。
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今後の夢や展望を教えてください。
私の研究のメインテーマは、「学校建築」です。子供がどういうふうに建物を使ってコミュニケーションを取るか、空間が発達にどのように関係があるかとい うことや、先生たちが授業でどのようにスペースを使うか、最適なスペースとはどのようなものか、などを研究しています。学校というフィールドをベースにし つつ、学生の研究内容とも融合や統合を通じて、学問的には、「建築(リアル)から情報環境(バーチャル)まで含めた人工的環境」「個人の行動と心理・意 識」「社会・文化の枠」の関係を説明する理論をいつか構築したいと考えています。
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研究室をのぞいてみよう!

「役に立つ」よりも「面白そう」という見方が大切

情報環境学部にいたからこそ出来た研究や発見がたくさんありました。初めから計画していたわけではなく、色々な縁や偶然から生まれたものです。指導する立場である私自身、新しい場所に踏み出すときは、当然ながら、そこのことはよく知りません。だから、はじめから計画や展望を固く決めておくことには、あまり意味がないような気がします。「役に立つ」よりも「面白そう」「何故だろう」という見方で研究テーマを設定し、一歩進んでみると、景色が変わってまた違う世界が見えてくる。大学はそういう経験を通じて、新しい知識や考え方を開拓していくスキルを学ぶ場所だと思っています。

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受験生・在学生へのメッセージ

未来を決めて逆算にして進路を考えなくてもいい

最近、受験生や入学したての大学生と話していると、将来どの職業につくか、どの会社に就職するかという視点から逆算して進路を考えなくてはいけないという プレッシャーを強く感じているように見えます。ですが、大学に入る時は、その分野のことを詳しく知っているわけではありません。だから、限られた知識に 頼って将来像を限定せず、はじめは、漠然と方向性を定めるくらいでちょうど良いと思います。勉強することで、だんだんとその先の世界が見えてきます。ある 程度見えるようになってから次第に具体的な方向を決めてゆけば良いのではないでしょうか。

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もっとこの研究が知りたい!