音響空間研究室 伊勢 史郎 教授

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「音響樽」で
どんなところにも
ライブ会場を再生!
音響空間研究室
伊勢 史郎 教授
デジタル情報工学コース
電機大学情報環境学部デザイン_r9_c19
ステージで聴こえる音を3D再生、
コンサートホールでの演奏がリアルにできる!!


音響空間研究室では、その名も「音響樽」と呼ぶ没入型聴覚ディスプレイ装置を研究しています。「音響樽」は、人が一人入れる平面形状が九角形の樽型構造の 中に96個のスピーカーを設置したもので、あたかもライブ会場にいるかのように厳密に再生された音響空間を体験することができます。
「音響樽」を用いれば、例えばコンサートホールのステージ上の音を3D再生することで、演奏家がリアルなイメージで練習をすることができます。インターネットに接続した複数の音響樽を用いることにより、複数の演奏家が様々なコンサートホールでアンサンブル演奏を行うこともできます。他にも、遠隔であることを感じさせないような会話、自然の音環境の中での癒し空間の創造、高級オーディオルームでの音楽鑑賞など応用範囲も広がります。

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東京カテドラル聖マリア大聖堂での収録風景
人の“気配”までも再生?!

また、「音響樽」では、あたかもすぐ隣に特定の人がいるかのような音場も体験できます。人が少しでも動けば空気が動き、音が発生します。「音響樽」は、その音の動き(波面)を3次元的に厳密に再現できるので、人の“気配”までも再生できるのです。聴覚は、人間が太古の昔から状況を把握し、また言葉を獲得してからはコミュニケーションの手段として活用してきました。デジタルデバイスが発展して生活は便利になり、音を通じて空間を肌で感じることを人は忘れがちになっています。しかし、会話や音楽だけでなく、自然界の音は人間らしい生活になくてはならないもの。最先端の科学技術により、こうした音のある環境をリアルにつくり出す同研究室のプロジェクトは、社会的な意義のあるものといえます。

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京都河村能舞台での収録風景
井筒 シテ河村晴道

先生へのQ&A

この研究をしようと思ったきっかけは何ですか?
360度を画面で囲まれる没入型“視覚”ディスプレイ装置はすでに実現しているのですが、聴覚では不可能といわれてきました。ならば自分が可能にしてやろうと燃えましたね。研究を進めると徐々に解明していくことができ、ついに「境界音場制御の原理」を見出したのです。そして、iPS細胞のようにハイレベルな研究を選りすぐって助成するJST CREST *1に採択され、世界初の没入型聴覚ディスプレイ装置「音響樽」を開発しました。今、研究室ではこの「音響樽」の製品化も視野に入れながら、CRESTでの研究目標達成に向けて研究を進めています。

*1 JST CREST (科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業)研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」 研究課題名「音楽を用いた創造・交流活動を支援する聴空間共有システムの開発」研究代表者 伊勢史郎、研究分担者 尾本章(九州大学)、上野佳奈子(明治大学)、榎本成悟(情報通信研究機構)
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音響空間を研究することで、どういった能力が身につきますか?
音響に関わる研究は、はるか昔から行われており、さまざまな学問を吸収しながら発達してきました。例えば、電気通信や信号、機械などの工学系、数学や物理などの理学系、さらには音楽や心理学なども関わってきます。また、実験ではホールなどの会場に機械を設置し、体を動かして測定したりすることが多く、ダイナミックな研究プロジェクト運営も経験できます。学術要素を網羅的に学ぶことで各分野の基礎力が身につきますので、その中から自分の関心に合う分野を選んで進んでいくことができると思います。
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今後の夢や展望を教えてください。
小学生が日本の古典芸能である「能楽」を学ぶために、能楽の舞台の音場を録音し、映像とともにリアルに再生する“バーチャル能舞台”を開発しています*2。これにより、例えば「シテ」や「ワキ」などの演者の動きを分析してみたり、伴奏との関係を探ってみたりすることで、能楽をより深く理解させることができます。この装置を全国の小学校に持っていくことはできなくても、5チャンネルくらいに簡素化して伝送すれば、教室で再現することも可能です。このように、没入型聴覚ディスプレイ装置は教育効果を高めるツールとして発展していくでしょう。

*1 JST CREST (科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業)研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」 研究課題名「音楽を用いた創造・交流活動を支援する聴空間共有システムの開発」研究代表者 伊勢史郎、研究分担者 尾本章(九州大学)、上野佳奈子(明治大学)、榎本成悟(情報通信研究機構)
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研究室をのぞいてみよう!

「音響樽」を各地のイベントに持って行くなど動き回ることが多い

音響空間研究室の部屋には、大きな「音響樽」をはじめ、収録に使う球形のマイクロフォンや機材などが所狭しと置かれています。研究室メンバーは「音響樽」を各地で行われる展示会やイベントに持って行ってデモンストレーションを行ったり、ホールや能舞台に収録に行ったりと動き回ることが多く、とても忙しい研究室です。したがって、学生は主体的、積極的に行動することが求められます。そういった実践経験を積みながら、主体性、積極性を身につけていくことができるでしょう。

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受験生・在学生へのメッセージ

どのように世の中にインパクトを与えたいかを考えよう

何事によらず、世の中にインパクトを与える仕事をするためには、その分野の最先端を学ぶ必要があります。そのためには、最先端を学べる環境に身を置くことが欠かせません。入学したら、自分は将来どんな分野でどのような仕事をして世の中にインパクトを与えたいということをよく考えて研究室を選んでほしいと思います。

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もっとこの研究が知りたい!