東京電機大学情報環境学部 FDフォーラム
学生の自主・自立を支援する個別重視型教育
−文部科学省平成17年度特色ある大学教育支援プログラム−
FDフォーラム実施報告
2006年3月25日、東京電機大学情報環境学部 千葉ニュータウンキャンパスにおいて、FDフォーラム「学生の自主・自立を支援する個別重視型教育」を開催しました。近隣自治体、東京地区企業、全国大学関係の方々を中心に約60名弱のご参加を賜り、盛況にて無事終了することができました。
実施日時 平成18年3月25日(土)14:00〜16:30
実施場所 東京電機大学千葉ニュータウンキャンパス 総合メディアセンタ−
プログラム
@開会のご挨拶 東京電機大学学長 原島文雄
A東京電機大学情報環境学部の教育について 名城大学人間学部教授 池田輝政氏
B「学生の自主・自立を支援する個別重視型教育」の紹介 東京電機大学情報環境学部長 中村尚五
CSIEMによる教育方法について 東京電機大学情報環境学部 土肥紳一
D学習サポートセンター運営とその効果 東京電機大学情報環境学部長 中村尚五
東京電機大学情報環境学部の教育について
FDフォーラムでは、本学学長原島文雄の挨拶に続いて、名城大学人間学部教授池田輝政様から、「東京電機大学情報環境学部の教育について」と題して、情報環境学部における特色ある教育の特徴について、文部科学省平成17年度特色ある大学教育支援プログラムの審査委員の立場からご紹介頂いた。
2001年設置の情報環境学部は、「実学」と情報通信技術の応用力を強みにして、教育方法の個々の取組みを「学生の自主・自立を支援する個別重視型教育」に向けてた総合的取組に発展させてきた。具体的には、導入科目・ワークショップ・プロジェクト科目など卒業研究につながる教育プログラム、必修科目廃止と卒業までの時間割作成、授業内容に合わせた講義回数・時間の工夫、授業内容やプロセスの閲覧・利用などを可能にするウェブ環境、学生の自主学習支援のエクステンション・プログラム、授業料の単位従量制など、教育方法や学修環境にわたる創意工夫と開発を持続手に行ってきた点に、他の大学にはない総合性の特色が見られた。また、こうした取組の一つひとつが他の大学のモデルとなっている点も評価された。
学部教育の大事な点は、当該学部の人材像に関するミッションであると考えるが、それは短期間で変わる性質のものではない。設置時点で決めた教育ミッションを基本にした真摯な努力のプロセスが、本来の教育改革の姿ではないかと常日頃考えている。そのためには、教育ミッションと日々の教育・学修活動のつながりや課題を学内で常に議論し修正できる文化を築きあげるような努力を大事にしてもらいたい。

「学生の自主・自立を支援する個別重視型教育」の紹介
情報環境学部は下記の3つの目標にしたがい教育・研究活動を実施している。
1.個を重視する自主・自立型教育
学生に適合する学部デザイン
2.産学官連携教育
企業等から高く評価され就職率も極めて高い
3.地域に密着した学部
印西市と協力連携協定を結び、種々の活動を計画中
平成17年度に採択された特色GPは上記の1を主体とした総合的取組に対するものである。本学部の教育システムの概要を下記の項目について説明する。
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1.カリキュラム編成原理
「学年制・必修科目の廃止(事前履修条件、完全単位制度)」
学年制廃止による「完全な単位制」の実施
所謂、バブル期を迎える頃には大学は単なるラベル取得の機関に過ぎない様相を呈し,残念ながら現在においてもその余韻が残っている感を受ける。しかし、昨今大学生の質が問われるようになり、グローバルスタンダードの言葉が頻繁に使われるようになってきた。多くの大学人が大学生の質を上げなければならないと主張され,種々の議論が為されている。皮肉なことにこのような時期に高校生の大学進学率は約50%となった。まさに、大学大衆化の時代である。入学してくる学生の学力、学習力レベルはまちまちであり、今後その状況はさらに深刻になることが予想される。これから大学へ進学してくる多くの学生は学力、興味等において多様化していることは間違いない。個々の学生のペースで学習できる仕組みを作っておかないと、全体が低レベルに落ち込み大学として機能しなくなる事を恐れる。ある学生は3年あるいは4年で卒業するし、ある学生は5年、6年,7年とかかるであろう。このように学力,その他において多種多様な学生を教育する場合,学年制は学生および教員の両者にとって負担になる。そこで、本学部は完全な単位制に踏み切ることとした。これは個々の学生が状況に応じた教育を受けられるように配慮したためである。
完全な単位制にしたことにより優秀な学生は彼らのペースで先に進むことができ、また、他の分野にも興味をもっているとか、学力不足でなかなか先へ進めない場合でも留年とか卒業延期と言う事に関係無く自己のペースで納得できるところまで学習できる。
必修科目を事前履修条件で置き換える
必修科目をなくし,事前履修条件を導入することにより無理のない系統立てた学習が可能となった。事前履修条件はある科目を学習するために必要となる科目を明確にすることである。事前履修条件は,ある科目を履修するために必ず事前に学習しておかなければならない科目,できれば事前に学習しておくことが望ましい科目の2種類とした。
理工系のような積み上げ式の学問体系が必要な場合、必修科目を規定し、それらを履修し単位取得しなければ次のステップへ進めないように進級条件等で工夫はしている。しかし、現実には厳格な制度ではなく卒業までにすべての必修科目を単位取得すればよいということにする場合が多いことが実情である。必修という条件はその学科を卒業するためのみでなく後続の科目を勉強するためにはどうしても単位取得が必要な条件になっている場合も多い。
理工系ではしばしばそのようなことが低学年時の必修科目に起こる。このような場合、やむをえないから卒業までに単位取得すればよいということにすると、本来の考えに反することになる。また、必修科目の場合、その単位が認められない限り卒業できない制度であるから、単位認定に当たって、教員にはかなりのプレッシャーになることが考えられる。勿論有ってはいけないことであるが、本当にその科目の単位を取らないと、社会で働けないのだろうか、一つの科目の単位取得がその学生の将来を決めてしまうのではないかなどと考え出すと、単位認定の厳正さに若干の揺らぎが生じることも起こる可能性がある。事前履修条件は科目間の関係に重きを置いた制度である。卒業に関しては緩い条件のようであるが、積み上げ式の勉強を実行する場合、ある科目が条件以上の成績に達しないと、それが事前履修条件になっている後続の科目は履修できないことになる。これは従来の必修科目より厳しい条件ともいえる。つまり十分な基礎学力なくして次のステップへ進むことはできないという考え方である。
GPAによる履修条件の設定
多くの大学で、学生が安易に多数の科目を履修することは消化不良の原因にもなり、実力をつけることに反する結果となることから1セメスターに履修できる単位数に上限を設定している。情報環境学部ではGPAにより上限履修単位数を設定している。
1セメスターにおける標準の履修上限単位数は21単位に設定。
前セメスターのGPAが3.0以上の場合上限単位数は25単位に設定。
前セメスターのGPAが1.0以下の場合、上限単位数は12単位とする。
連続する2セメスターで、いずれもGPAが1.0以下の場合、その状況に応じて退学勧告される。また、4セメスター終了時でGPAが3.9以上の場合、早期卒業の候補者になる。大学院への飛び級、推薦による大学院進学にもGPAが指標の一つとして使われる。
2.セメスター制度における授業時間の短縮・週2回、3回授業
本学部で開講される授業は,原則として月,水,金曜日は50分,火,木曜日は75分で実施している。大学の授業は,通常1コマ90分で開講されているが,1つの授業を50分もしくは75分に細分化し,1週間に複数回受講することによって,学生の意識が継続して集中できることを期待している。
語学学習のようなスキルアップ科目や集中力を必要とするような座学は50分週2回あるいは3回が標準の構成で、人文系の科目は75分週2回、実習に相当する科目は75分を休み時間を挟んで連続して使用(150分)し、これを週2回(300分)とすることで対応している。
情報環境学部の学生156名にアンケート調査した結果96%が50分主体の授業時間に満足。学生の評価は極めて高い。教員サイドの評価も週2回、3回の講義はロードとしては大変だが、講義をする立場からは、やり易いという意見が多い。学生のアンケート結果とほぼ同程度の結果と感じている。
3.システムとしてのダイナミックシラバス
ダイナミックシラバス(履修に関して)
大学入学時点における学生の目的意識は,低下していることが指摘されている.このような学生の目的意識を向上させるために,情報環境学部では,新入生が卒業後の進路を定め,それを実現するために必要な科目を選び,卒業までの時間割を作成することを試みている.情報環境学部の教育の特色である学年制の廃止,前述した単位従量制の導入,事前履修条件などの制度を反映しながら,卒業までの時間割を作成することは,かなりの労力と時間が必要である。ダイナミックシラバスは,このように複雑な教育システムの上で,卒業までの時間割を容易に作成できることを多くの目的の一つに選定し開発致した。ダイナミックシラバスは授業料の履修単位従量制の下で、科目履修を円滑に行う機能を含んだ教育支援システムの機能を含んでいる。この概要を説明するために、本学部において入学時に行われる導入教育におけるダイナミックシラバスの活用について報告する。
導入教育は,大学生活を始めるにあたり,約2週間をかけ,大学で学ぶ心構え(自らのカリキュラムを設計する)を教員と一緒に考える授業である。この授業を受けることによって,学生が明確な目的意識とモチベーションを高め,自らの夢と希望を実現することを目的としている。
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導入教育では,上図に示しますように「カリキュラム計画」と「ワークショップ」を開講している。
カリキュラム計画で新入生はダイナミックシラバスを最大限に使う。本学部に入学した学生が最初に行うことは集中講義の「カリキュラム計画」を受講し,各自の卒業までの履修計画を立てることである。卒業までの時間割を自分で作成し,将来進む分野と完成した時間割をメールで提出する。これは一見無謀なことのように思えるが,大学に入学した目標を明確にするという観点から考えれば一つの挑戦であるとも考えられる。提出した履修計画は学習が進むにつれ,バージョンアップが必要となる。各年度の初めに履修計画のバージョンアップ版の提出を卒業時期まで続けることにより,学生が絶えず目標あるいは目的意識を持って授業を履修することが期待できる。
ダイナミックシラバス(教学)
情報環境学部の教育の特色によって,学生は自由に時間割を組むことができる。一方,卒業までの時間割を作成するためには,事前履修条件やGPA(Grade Point Average)などの条件が複雑に関係するため,時間割の作成は非常に複雑になる。パソコンとインターネットを介して,これを支援するシステムとしてダイナミックシラバスは有効なツールになっている。ダイナミックシラバスは,学生が将来の目標を掲げる(決める)ために必要な科目を系統的に表示し,無理のない順序でそれらを学習できるよう支援するシステムの機能も有している。
ダイナミックシラバスを使った卒業までの時間割の作成手順の例を以下に示す。最初に,(1)科目の一覧表の中から卒業単位を満足するように科目を選択する。卒業所要単位数を表1に示しておく。選択した科目が事前履修条件等を満足していることを確認した後,(2)1セメスターから順に時間割の作成を行う。(3)時間割上の矛盾がないことをシミュレーションで確認し,(4)当期の科目のみ履修登録を行う。以下同様に,卒業までの時間割をセメスター毎に作成していく。以下に,ダイナミックシラバスを使った時間割作成の主な様子を示す。
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導入・リテラシー科目 |
2単位以上 |
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素養科目 |
40単位以上 |
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専門科目 |
60単位以上 |
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任意に選択し習得した科目 |
22単位以上 |
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合計 |
124単位以上 |
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表1 卒業所要単位数 |
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個人別カリキュラム設定画面は,科目の選択を行うためのものである。画面は,大きく上下に分かれている。上半分が春期,下半分が秋期に開講される科目である。情報環境学部には学年がないため,科目の開講時期は春期と秋期だけになる。この様子を,図2に示す。
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図2 個人別カリキュラム設定
個人別カリキュラム設定画面の中にある各科目名には,かぎ括弧で囲まれた数字があります。この数字は,単位数を示しています。単位数の表示の後には,本のマークがあります。これは通常のシラバスを意味しており,クリックするとシラバスの内容が表示されるようになっております。さらに,本のマークの後ろには,赤い星印(★)が付いている科目があります。赤い星印は,この科目が事前履修条件と関係していることを示しています。この様子を,図3図 に示す.
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図 3 科目に関する情報
例えば,「コンピュータプログラミングA」に付いている赤い星印(★)をクリックすると,この科目を事前履修条件に指定している科目が,薄い紫色で表示さます。したがって,薄い紫色で表示されている科目を履修するためには,先に「コンピュータプログラミングA」の単位を取得しないといけないことがわかります。この様子を,図4に示す.
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図4 事前履修条件の表示例その1
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図5 事前履修条件の表示例その2
同様に「ディジタル信号処理」に付いている赤い星印(★)をクリックすると,この科目が事前履修条件に指定している科目を,濃い紫色で表示する.
科目の重複や履修条件などの矛盾がある場合は,エラーが表示される.エラーの内容を確認した後,時間割を修正し,その矛盾が無くなると時間割が確定する.この様子と実際に時間割を作成している状況を,図6と図7に示す.
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図6 時間割の確定

図7 時間割作成の様子
4.授業料の履修単位従量制の導入
授業料は,単位従量制の考え方を導入している。学生が科目を履修するためには,その科目の単位数に応じた授業料を支払う仕組みになっている。したがって,十分な計画のもとに科目の履修を行うことが重要となる。個人にとって興味も必要性も感じない科目をいたずらに履修しないよう注意すること,履修した以上は最後まで最大限の努力を惜しまないことを求めている。この制度を採用した背景には前述の学年制の廃止や履修制限などに大きく関係している。学年制を採用している場合、ほとんどの大学が実施している年間いくらという学費制度にそれほど違和感はない。しかし、個々のペースで学習させるために学年制を廃止した本学部の考え方から年間いくらという学費制度は馴染まない。むしろ単位従量制が自然な学費制度になっている。
情報環境学部における授業料の単位従量制
学生の多様化に伴い画一的な授業形態は困難を極める。
できる限り個別学習型を取り入れなければならない。
そのためには学年制が邪魔になる。もし、学年制を撤廃すると、
従来の学費制度は不適当。
授業料の単位従量制を導入。
この制度は授業料が高いか安いかの問題には
関係無く、純粋に教育上の必要性から発生した。
SIEMによる教育方法について
東京電機大学情報環境学部は,2001年4月に開講した.学科は,情報環境デザイン学科と情報環境工学科の2学科があり,大学院を含めても学生数は約900名の小規模なキャンパスである.この学部は学生の自主自立を目指し,独創的な教育システムを導入してきた.主なものは,新入生に対する約2週間の導入教育の実施,学年制の廃止,必修科目の廃止,事前履修条件の導入,単位従量制の導入,GPA(Grade Point Average)の導入,セメスター制の導入などが挙げられる.新聞紙上などで,大学入学時点における学生の目的意識は,低下していることが指摘されるようになった.このような学生の目的意識を向上させることを目的に,入学直後に約2週間の導入教育を実施している.また授業に対する価値観を学生と教員が認識する上で,単位従量制が効果を挙げている.さらに授業を1週間に複数回開講することの評価は学生および父母からも好評である.我々が着目したのは,このような学部の教育理念をスーパークラスとして継承し,学生のモチベーションを向上する教育を実施することである.モチベーションを高い状態に維持したまま授業を行えることが,教育効果の改善につながるものと考えている.
SIEM(Systematical Information Education Method)は情報教育において,学生の学習意欲を高め,教育効果を上げるために構築された教育方法である.以下にその特色を述べる.
授業の冒頭部は初頭効果(primacy effect)により,終末部は新近効果(recency effect)により記憶・学習効果は高くなる.この系列位置効果を利用して,SIEMでは授業の冒頭部に必ず身につけさせたい知識や技術を伝授し,終末部に再度確認を行う.具体的な枠組みとしては冒頭部・終末部にモデリング学習の要素の構成を配置し,中間部は記憶・再生効果が低い傾向があるため,学生が自ら問題解決にあたり経験を身に付ける発見学習を要素とした授業構成としている.
SIEMは,モデリング学習と発見学習の要素をもった枠組みを取り入れている.モデリング学習とは,Bandura,A.が提唱した注意や記憶といった認知機能を重視した学習理論である.基礎的な学習内容や必ず身につけさせたい知識や技術に関しては,@注意過程A保持過程B運動再生過程C動機付け過程をベースとしたモデリング学習理論を背景とした教授法を取り入れている.同時に,授業の流れの中では,学生の主体的な探索態度形成のため,発見学習の要素を取り入れている.モデリング学習で本質的に重要な基本原理が同定されているので,学生はそれに基づき,発見的方法の時間では試行錯誤をしながら問題解決にあたる.この枠組みは,学習内容の確実な習得とともに,学生のモチベーション,創造的思考,自己効力感を高める効果を目指している.
初心者である学生にとって学習内容は,できるだけ簡潔かつ細分化されていることが望ましい.目標に至るステップを細かくし,失敗を最小限におさえるような配慮をし,興味を失わせないように工夫した.それには簡単な問題から少しずつ学習させ,成功の機会を与えながら,自信をつけさせていく方法を取り入れている.
ティーム・ティーチングは複数の教員が各自の専門性を生かして同一クラスの指導にあたる授業形態である.教員が相互に協力しティームを組んで授業を行うことで,一斉授業では困難な,きめ細かで専門的な指導が可能となる.学習の速度には個人差があるが,すべての学生が学習内容をほぼ理解できるようになるためには,ある程度個別の対応が必要となり,その意味でもこの形態は柔軟な対応をすることが可能である.
教員は,クラス全体が説明した内容を十分に理解できているか,教員の一方的な説明になっていないかを正確に把握する必要がある.これを調べるために,授業の理解度と学生の要望等を毎回アンケート調査している.調査結果は,webページで公開し,次回の授業の最初に簡単なコメントを付けながら解説している.授業評価による理解度が,クラスの80%を下回るときは,後日,補足を行ってい

評価項目について,モニタリングを定期的に実施することで学生のモチベーションの程度,どのような因子が学生のモチベーションに対して問題になっているのか(問題要因の発見),モチベーション向上のために改善すべき因子は何なのか(改善要因の分析)を具体的に把握することが可能となっている.@授業に関する時系列評価を前期,中期,後期の3段階でモニタリングすることによって,A因子の相関・モチベーションへの影響度を分析し, Bモチベーションを低下させる要因の分析を行い,Cこの要因を向上するためのコンテンツや授業内容を授業にアレンジし,Dフィードバックすることによって,クラス全体のモチベーションを向上できる.このような効果の実証には,因子の組み合わせによって効果をもたらすコンテンツと教授方法を豊富に準備しておき,その時々の学生集団の個性に合った内容をフィードバックすることで可能となる.これまでは,授業に対する教育効果を学生の試験結果等で判断していたが,SIEMをプログラミング教育に導入することによって,学生のモチベーションを時系列分析し,客観的な教育効果を測定できるようになる.SIEMの効果が期待される.

秋学期に開講している「コンピュータプログラミングA」は,プログラミングの入門教育を目的としており,2005年度は約70%の学生が初学者であった.2学科を対象に4名の教員が授業を担当している.このうち3名の教員のクラスがSIEMを実践した.3クラスの授業内容は同じであり,授業進行の同期をとりながら評価を行った.分析結果について,解説した.
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教員は常に授業に専念しているが,学生にとって適切に授業を実施できているか否かを客観的に測定することは,これまで困難であった.学生の成績を評価する上で中間試験や期末試験の点数は重要であるが,点数の高い学生が本当にプログラミングの能力が高いのか,疑問がある.我々は,授業の評価尺度として学生のモチベーションに着目した.モチベーションの測定は,J.M.KellerのARCSモデルを活用し,独自に追加した項目を含めて評価項目を作成した.ARCS理論では,学習意欲を注意(Attention),関連性(Relevance),自信(Confidence),満足感(Satisfaction)という4側面の枠組みで評価する.ARCSは,これらの頭文字を並べたものである.その理論背景である枠組みを応用し,実際の情報教育に適用したのが我々の研究である.
これまで実践してきた教授方法・内容を分析し,情報教育評価に適すると判断される独自の評価項目を設定し,データを積み重ねてきた結果,完成したのがSIEMアセスメント尺度である.1から16の項目はSIEMアセスメント尺度による評価項目である.これらの項目から授業改善のためにモチベーションに影響を与える要因は何かを分析できる.この分析結果から授業改善のための提案を行え,学習者に最適な授業戦略が可能となった.17から19の項目はモチベーション評価項目であり,学習者のモチベーションを算出する根拠となる.18は「現状認知度」という呼び方をしており,これは「学習者自身が現状でどの程度の力があると認知しているのか主観的に評価する」ものである.実際に習得しているのかどうかは,主観なので判断できないが,重要度と期待度の質問項目の間にこの項目を入れることで心理的効果を生み,モチベーション評価項目として完成される.需要と供給は現状を把握させることでより明確になるからである.学習者の自己イメージや自信などを把握することも可能である.
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モチベーションに着目したSIEMは,過去のプログラミング入門教育において,効果的であった.今後はSIEMアセスメント尺度に基づき,授業の後期における学生のモチベーションが,少なくとも前期のモチベーションを上回るよう,教授方法および教授内容の工夫を行いたい.さらに,他の教員へのSIEMの拡大,プログラミング教育以外の分野への拡大を実施し,その効果を検証していく計画である.
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学習サポートセンター運営とその効果
平成17年10月から学習サポートセンターを試行的に開設した。支援する科目を数学とプログラミングに特化し、試行した結果を下記に示す。
学習サポートセンターの開設時間及び担当
l 「学習サポートセンター」では、本学部に接続した形で設置された大学院情報環境学研究科修士課程の学生による「プログラミング関係個別相談」、および長年にわたり高等学校において教鞭をとってきた経験豊かな退職教員(学習アドバイザー)による「数学個別相談」を行った。
l 「プログラミング関係個別相談」については、平成17年10月17日より、「数学個別相談」については、平成17年11月1日より、それぞれ後学期授業終了日である平成17年12月15日まで開設した。
課題と新たな取組み
(課題)
l 来年度以降も「学習サポートセンター」を設置し、「個別重視型教育」の更なる充実発展に努める予定である。
l 今年度、「プログラミング関係個別相談」を担当した大学院生からは、課題として課された内容が事前に知らされていないために、対応に苦慮したとの報告があった。
l 来年度以降は、授業運営と個別相談との連携が必要であると共に、広く周知を行い、学生間に浸透させていくことも必要である。
(平成18年度からの新たな取組み予定)
・ 「数学」は、テスト結果を基に下位の学生に対し、「学習サポートセンター」での支援を受けることを義務付けることで、学習サポートの充実発展に努める。
b・ 「数学」の担当者として、学習アドバイザー(退職教員)に加え大学院生を採用することで、専門的な相談からより身近なアドバイスまで受けられる体制とする。
・ 「プログラミング関係」については、「個別相談」での多様な質問・相談に対応するとともに、新たに「少人数演習」を導入し、具体的体系的に演習を行うことでプログラミングを苦手とする学生への支援強化を図る。



平成18年3月1日
特色GPご担当者殴
東京電機大学情報環境学部
学部長 中村 尚五
拝啓
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
平素は,本学の教育研究活動にご理解とご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、本学情報環境学部は、文部科学省の実施する平成17年度特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)において「学生の自主・自立を支援する個別重視型教育」と題して採択されております。
この取り組みは、東京電機大学における建学の理念である「実学尊重」の精神に基づき、学生の自主・自立、問題発見・解決能力、創造性、グローバル性の育成を目標とする教育方法全般の改善を推進する総合的な取組で、今後継続的に発展させていく重要な課題と考えております。
特色GPに伴う初年度の活動状況の報告と共に、今後の取り組みの概要の紹介を兼ねて、下記のとおりFDフォーラムを開催することとしました。このFDフォーラムでは、学生の自主・自立を支援する個別重視型教育を目指した新たな教育方法、それに伴って実施している活動を報告させて頂き、多くの皆様方のご意見を賜り、今後の継続的な取組みに反映させて行きたいと考えております。
年度末でご多忙のこととは存じますが、この機会に本学情報環境学部が取り組んでいる新しい教育の一端をご覧いただきたく、また、志を同じくし日々 学校教育の改善に邁進される皆様のご意見を頂戴いたしたく存じます。案内を同封させていただきましたので、お誘いあわせの上、ご出席くださいますようよろしくお願い申し上げます。
敬具
記
1.日 時 平成18年3月25日(土) 14時 〜 16時30分
2.場 所 東京電機大学 千葉ニュータウンキャンパス
(印西市武西学園台2−1200 TEL 0476-46-4111)
3.プログラム 別添の案内のとおり
以上